前回(第82号:『署名と印鑑の豆知識』)の続編で、今回は『割印と捨印』について、一般的な取り扱いをご紹介したいと思います。
まず、一般的に使用されている『(広義の)割印』とは、「契印」・「消印」・「(狭義の)割印」の3つの総称で、具体的には次のような違いがあります。
「契印」とは、ホチキスや袋綴じされた複数頁の文書が一体のもの(分離できないもの)として作成されたことを裏付けする簡易な証明方法のひとつです。
どの印鑑を、どこに、どのように契印すればよいのか、一般的な答えは次のとおりです。
当該文書に記名捺印した者が使用した印鑑と同一の印鑑
頁間であればどこでも可
(ホチキス留めの場合は一般的に見開きの内側や上部、袋綴じの場合は表紙の表裏)
複数人が契印する場合には、上下の位置や各人の契印の順番が違っても全員の契印があれば可
前後の頁に印鑑の中の文字が写れば可、文字が写らず印鑑の淵のみは不可
但し、淵のみ又は不鮮明な場合は、気にせず上下の余白に再度契印することで可
「消印」とは、文書と貼付した収入印紙を一体のものとし、収入印紙の再使用をできなくするために、両方にまたがるように印鑑を押すことを言います。
「(狭義の)割印」とは、例えばカーボンシートによる複写式の契約書を作成する場合、当該契約書正本とカーボン複写によって出来あがった契約書の控えの両方にまたがるように印鑑を押すことを言います。
この方法によって、2つの書類が同一内容であり、且つ同時に作成されたことを証明することができ、内容の改ざん防止に役立ちます。
次に『捨印』ですが、そもそも捨印とは、タイプミスや漢字の変換ミス等、文書全体の主要な内容を変化させることのない軽微なミスを訂正するための方法で、間接訂正とも呼ばれています。
例えば、契約当事者が全く別人に替わってしまう訂正や、契約金額の訂正等は捨印で訂正できる範囲を明らかに超えていると思われます。
また、文書への実印や銀行印の捺印と一緒に、事前に捨印をもらう際は、「当然に押さないといけない訳ではない。」という姿勢で対応する方が無難です。
間接訂正に対し、修正したい箇所に直接印鑑を押して訂正する方法を、直接訂正といいます。
厳格な訂正を必要とする場合には、直接訂正+間接訂正(何行目何字削除と記載)にて処理するのがベストです。
なお、事務作業上の都合等によって、割印や捨印を押すべき位置を指定されている場合は、上記の一般的なルールを踏まえたうえで、提出先、文書の性質等を考慮し、些細なことでトラブルにならないように柔軟に対応すべきと考えます。
<今回のレポート担当>
酒井司法書士事務所(福岡市中央区)
司法書士 酒井 謙次 先生